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ムキンポの鼻☆スペリオール

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2009年9月号

連載第62回

ファシズムの誕生(その萌芽)



 8月1日から3日まで三鷹市市民協働センターで開かれた「慰安婦」展に「行動する保守」が3日つづけて妨害に来た。初日、2日目と気になりながらも、ようやく3日目に短時間だけ様子を見にいくことができたのだが、彼らはこちらのことはヴィデオ・カメラを含む複数のカメラで好き勝手に撮影しておきながら、こちらがたった1枚写真を撮ったら、いきなり大勢で取り囲み、下品な言葉で恫喝を始めた。こら、チョーセン人、息が臭いぞ、日本から出て行け! なんと手前勝手で卑劣な連中だろう。もう少しでカメラを壊されるところだった。


 8月14日、文京区民センターで「ヘイトスピーチは許せない!『行動する保守!?』にどう向き合うか」集会が3時から9時まで6時間という長丁場で開かれた。会場には全国から200名を超える参加者が集い、夜遅くまで熱心な議論が交わされた。彼らを社会的に包囲し、孤立化させていかなくてはならない。だがどうやって?


 8月15日、僕はこの日、ファシズムの誕生(その萌芽)をこの目で見た気がした。夕方、全水道会館を出発した『アキヒト天皇制20年「戦争国家で安心安全」を問う8.15行動』のデモ隊が街宣右翼のたびたびの襲撃を果敢にはねのけ、靖国通りを九段下交差点に差しかかったとき、そこに待ち受けていたのは、嬉々として、しかし鬼気迫る勢いで、日の丸を振るう「一見ごくふつうの人びと」だった。あれだけの数の日の丸の旗をあらかじめ用意していたのは「行動する保守」の連中だったかもしれない。しかし「プロ市民右翼」に混じって、そこには「一見ごくふつうの老若男女」も多数参加していた。かなり飛躍して聞こえてしまうかもしれないが、関東大震災時の自警団による朝鮮人虐殺を僕は思わず想起してしまった。あるいはルワンダ内戦だって最初はこんなふうにして始まったのかもしれない、とこのテクストを綴りながら想像してみる。「8.15」は毎年繰り返される左右過激派同士の激突で、一般の人たちには関係ない、とあなたは思うかもしれない。しかし今年はそこに今までとは違う契機が持ち込まれていた気がする。憎しみと妄想のファシズムという新たな契機が。実は「行動する保守」にとって皇室や靖国は単なるネタにしか過ぎない、と僕は思っている。昭和天皇をパロディ化したパペットをデモ隊から強引に奪い、地面に転がし、撮影し、それを「反日左翼から奪った戦利品」などとして自分たちのブログやYouTubeで無邪気に公開し、はしゃいでいる姿を見ればそれは明らかに思える。どう考えてもあれは皇室を崇敬する者たちの振る舞いではないだろう。
 『彼らが最初共産主義者を攻撃したとき』や『茶色の朝』の寓話をあなたは知っているだろうか。ここで沈黙していたら、次の攻撃対象はあなたかもしれない。なぜなら『ルーフトップ』などという「不良の雑誌」を今あなたは読んでいるのだから。



2009年8月15日(土)
Yasukunix 2009

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