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Also Sprach Mkimpo Kid

1998年01月11日(日)

 今日は宮台真司×藤井良樹×中森明夫の対論集『新世紀のリアル』(飛鳥新社)という本を読んだ。すごく面白いよ。
 宮台、中森、大塚英志、そして浅田彰っていうのは、僕とまったく同世代なんだよな。語っていることが自然と頷けちゃうわけだ。
 微妙なところで対立する2人だけど、宮台×大塚の対論というのをいつか読んでみたいね。そうすれば「少女幻想」(あるいはもっと広く「女性幻想」と言ってしまってもいいんだけど)に対する僕のスタンスが、少しだけクリアになる気がするんだけど。
 それにしても「援助交際に愛を持ち込む、コクる30男たち」の話はよく理解できるね。僕が女性を買わない理由は主にここにあるんだ。

中森―― (略) 40代50代のオヤジは肉体だけが目当てだからいいんだけど、30代男は金で相手を買ってるだけなのに少女を傷つけたくないというヘタな罪悪感があるから、実はそこに恋愛感情のようなものがあると思い込んでコクっちゃう、つまり愛を告白したりする。それが最悪なんだと。

宮台――僕たちの世代の一部は、典型的にいうと、革命幻想やマルクス主義幻想や構造改革派的幻想を断念して、少女幻想にシフトしたんですよ。僕自身も少女幻想を生きたわけ。大塚英志もそうなのね。そのことを僕たちは覚えているべきだ、といったわけ。

藤井――俺は、断念できてないです。俺と、中森さん宮台さんたちとは年齢的にほぼ5歳離れてて、中森さんはある断念をする、宮台さんもある断念をした、そして2人がいわれるように、その世代の人たちは断念を経て適応に向かっているんだとも思う。 (略)

 僕は長い間、フィールド・ワークから遠ざかっているから、こういう「現場」からのフィードバックによる本はいい刺戟になるね。


1998年01月12日(月)

 かつて国会議員政策担当秘書を目指して2度(?)受験したが、失敗したという経歴をもつ人が制作した Political Links! というサイト、なかなか充実している。ギャグもわかる人だ。


1998年01月13日(火)

 ホームページのカウンタがようやく2.000を突破。1か月に1.000だね。


1998年01月14日(水)

 公取委の調査によると、OECDに加盟する主要25か国のうち、12か国で著作物について再販制度が認められている。

主要国の再販制度 (朝日新聞 1/14 朝刊)
国名/品目  書籍   雑誌   新聞   音楽CD 
日本
米国 × × × ×
英国 × × × ×
ドイツ ×
フランス × × ×
イタリア × × × ×
オランダ × ×
韓国 ×
 オーストラリア  × × × ×


 公正取引委員会の「政府規制等と競争政策に関する研究会」は13日、新聞、書籍など著作物の再販売価格維持制度の見直しに関する報告書をまとめた。
 報告書は、競争政策の観点から「現時点で著作物再販制度を維持すべき理由に乏しく、基本的には廃止の方向で検討されるべきもの」としながらも、再販制度がこれまで、著作権者や著作物の流通ルートを保護する役割を担ってきた点を重視し、「特に憲法が保障する表現の自由等を背景とした文化、公共的な観点を踏まえて総合的に考慮する必要がある」と指摘。再販制度を「直ちに廃止することには問題がある」と結論付けた。(読売新聞 ◆公取委規制研が再販見直しで報告書 1月13日 20:40

 まあ、一応、妥当な判断なんじゃないだろうか。
 朝日・読売・産経3紙の再販制度関連の記事を読み較べてみたが、今回は前回(12月9日の日記参照)ほどヒステリックな調子もみられず、好感がもてた。産経新聞だけは相変わらず、識者の意見として再販制度廃止反対のインタヴューだけを掲載して偏りがみられたが。それと読売新聞の社説にあった

 わが国の夕刊を含む全新聞の普及率は1世帯1.2部、一般紙の戸別配達率は99%で、欧米と比べ圧倒的な高率を誇る。国民の90%余が戸別配達の継続を、約80%が再販制度を支持している。

というデータは信頼できるものなのだろうか? ちょっと疑問に思った。
 再販制度について意見のある人は、猪瀬直樹電子掲示板に投稿しよう。


1998年01月15日(木)

 僕にはまったく関係ないことだが、今日は成人の日だそうだ。それにしても朝から再び大雪だね。


1998年01月16日(金)

 今日は宮台真司の『終わりなき日常を生きろ』(筑摩書房)、『制服少女たちの選択』(講談社)、『まぼろしの郊外』(朝日新聞社)、伊従寛の『出版再販』 (講談社)、猪瀬直樹『ニッポンを読み解く!』(小学館)を買った。
 『ニッポンを読み解く!』(1996年8月1日初版第1刷発行)は帯の惹句によれば〈「金属疲労・日本」をめぐる知日派知識人10人との対話〉である。
 とりあえずプロローグとエピローグを読んだ。対談集というこの本の性格から、プロローグとエピローグをひととおり読めば、一応、文脈的に完結したテクストの読みができる筈である。
 猪瀬直樹電子掲示板で、現在、論争となっている点について、若干、自分の考えを述べてみたい。

 受験勉強と偏差値の代わりに青年海外協力隊を義務化すること。公務員と教員の採用に際し、最低3年間の民間企業勤務経験を条件とすること。この2つのアイディアが思い浮かんだのは、三島由紀夫が自決したころ、つまり僕が社会人になりたてのときで、もう25年も前だった。そのころから僕の世界観の基本は変わっていない。

 僕たちは市場社会で生きる人びとを社会人と呼ぶ。学生は社会人ではないが、青年協力隊を義務づければ自動的に社会人の資格を得る。

 上に書いてあることには、まったく反対である。
 「僕たちは市場社会で生きる人びとを社会人と呼ぶ」とあるが、現代日本で市場社会の「外部」に生きる人びとなどそもそも存在せず、上の定義によれば、もともと学生も公務員も教員も社会人である。
 平成9年3月の高等学校卒業者数は150万4千人、そのうち大学・短期大学への志願者数の比率(志願率)は,54.6%である(平成9年度学校基本調査速報)。
 また青年海外協力隊の事業案内によれば、現在の協力隊員数は約2.000名、発足以来の30年間でも計14.487名に過ぎない(1995年3月31日現在)。
 一般にモティヴェイションが低いと考えられる約80万人もの日本の若者を受け入れてくれる「途上国」が一体どこにあるというのか?

 戦後50年の間に、日本人はフェアで誇り高いという印象を国際社会で回復し得たのか、経済力以上にそちらの方が問われているのだと思う。
 ではそのために、今後、どうしたらよいのか。

 自らの発した問いかけへの答えとして、最初、猪瀬は「もちろん冗談。でも少し本気」で「徴兵制を復活させた方がいい」と提案する。そしてそれを言い換え、さらに敷衍し、説明する形で、今度は「青年海外協力隊を義務化すること」「民間企業勤務経験を条件とすること」を掲げる。
 日本人が「フェアで誇り高いという印象を国際社会で回復」するため、大学入学希望者の「全員」が青年海外協力隊に参加し、公務員と教員志望者の「全員」が民間企業勤務を経験するなどおよそバカげている。

 いじめとか体罰は、閉じた場所で起きる。乗り換えの利かない単線レールしかないから起きる。いったんこのレールを断ち切らないと、ただ辛く退屈で果てしなくつづく日常性の前で奴隷根性しか生まれない。

 依然として終身雇用・年功序列は、日本最大の宗教である。タテ社会と単線レールから積極的に脱皮するためには横議横行を認めなければいけない。

 猪瀬が「本気」で「個人の責任を曖昧にし、終わりなき日常を固定化したシステム」=「天皇制」から「積極的に脱皮」したいと考えるのなら、「青年海外協力隊を義務化すること」「民間企業勤務経験を条件とすること」は、「冗談」などではまったくなく、文字どおり、装いを新たにしたかつての「徴兵制」の復活に他ならず、結局、日本人の「金太郎飴体質」の強化にしか繋がらない、ということを知るべきである。

 辞書を引くと、「横議」とは「勝手に議論をすること」であり、「横行」に至っては「勝手気儘に歩き回ること」だけでなく「悪事が盛んに行われること」とも記されている。(中略)いま日本人に必要なのは新しい横議横行に対する想像力である。

 その結論には大いに賛成するが、「勝手気儘に歩き回ること」とは「海外協力」という美名のもとで、(「進め! 電波少年」のように)日本の若者たちが大挙して途上国の生活を荒らしまわるというようなことでは決してない。
 真に問われているのは、個々人の自立心である。

「これからの日本をどう変えていけばいいのか」などと言っている人をわたしは信用しない。そんなたわけたことを言う前にまずお前が変われ、といつも思う。システムを変えることで個人が変わる時代は終わっている。(村上龍「文藝春秋 九月特別号 / 神戸小6惨殺事件 寂しい国の殺人」)

1998年01月17日(土)

 国会等移転審議会は16日、首都機能移転の候補地として、東北から関東の「北東」ブロック、東海、中部、近畿にかけた「東海」「三重・畿央」両ブロックの計3ブロック11府県に及ぶ11地域を選んだ。
 (中略)
 移転の対象となるのは国会、最高裁判所、首相官邸と中央省庁で、皇居は東京に残る。(朝日新聞)

 首都機能移転の是非はともかく、とりあえず皇居だけでも、京都でも北海道でも沖縄でもいいから、移転して、跡地をマンハッタン(NYC)のセントラル・パークのように、一般に開放してみてはどうだろう?
 阪神淡路大震災から今日でちょうど3年だ。


1998年01月18日(日)

 今日は宮台真司の『終わりなき日常を生きろ』(筑摩書房)を読んだ。



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