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ムキンポの鼻☆スペリオール

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2008年12月号

連載第53回

「いま、抗暴のときに」



 イルコモンズ氏によれば公安警察の暴力を公暴と呼ぶ。その公暴が衆人環視の中、東京の中心地で恥ずかしげもなく発揮されたのは10月26日のことであった。日曜の午後、渋谷区神山町にあるという麻生太郎氏の豪邸を40〜50名の若者たちがぞろぞろと見物に出かけようとしていた。何しろ敷地だけで62億円の価値があるという時の総理大臣の大邸宅が渋谷駅の目と鼻の先にあるのだ。一目見てみたいと人びとが好奇心に駆られて何の不思議もない。いや、むしろ当然の成り行きであろう。ハチ公前広場に集まった若者たちに渋谷署の警備課長はにこやかに告げた。麻生邸の近くまではこのまま集団で行っていいけど、麻生邸の手前に規制線が張られてるから、そこから先は5〜6名のグループに分かれて見学してくださいね。若者たちは警備課長の指示に従い、用意してきた横断幕を畳み、拡声器も使わずに、公道をただ整然と歩き出した。


 道玄坂二丁目東交差点で信号が赤になり、若者たちは一旦停まった。しばらくして信号が青になり、再びゆっくりと歩き出した。そのとき、後に「ゆでだこ」と呼ばれることになる挙動不審の人間が「公暴だ!公暴だぞ!」と奇声を発した。そして先頭附近を歩いていた3名がいきなり逮捕されてしまったのだ。これはとんだ騙し討ちである。複数のカメラによりこのときのやりとりはすべて記録が残されており、一部はYouTube上に公開され、11月20日時点で再生回数はすでに27万回に達している。


 11月6日(木)、12日間の不当な逮捕勾留の後、当該3名が解放された。総評会館での同日夜の集会に3人は無事で元気な姿を現した。当該の1人はココロ系であるとも聞くが、少なくともその夜の彼の発言からは僕はそんな感じをまったく受けなかった。3人が3人ともにみごとであった。もしも僕が逮捕されたら、と考えてしまった。僕のために250人も集まってくれるかどうかはわからないが、人数の多寡はともかく、そのとき僕はこの3人のように立派な挨拶ができるだろうか。それ以前に、留置場の中で僕は恥ずかしくない態度を貫けるであろうか。しかし僕が見聞きする限り、逮捕されて志しを挫く者はほとんどいない。むしろ皆強くなって帰ってきている。警察による公暴はむしろ人びとの抗暴を掻き立てているのだ。
(「いま、抗暴のときに」というタイトルは辺見庸氏の同名の著書から拝借しました)



2008年10月26日(日) 〜 11月6日(木)
Reality Tour 麻生首相のお宅拝見
62億円の豪邸を見物に行こうとしただけで逮捕ぉ!?!?

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