◆天皇肖像権侵害認めず…富山地裁
富山県立近代美術館が昭和天皇の写真を用いたコラージュ作品を非公開にしたのは、住民の「鑑賞する権利」を奪う違憲・違法なものとして、作者の大浦信行さん(49)(東京都国分寺市)ら三十五人が同県などを相手取り、計四百四十万円の損害賠償などを求めた国家賠償請求訴訟の判決が十六日、富山地裁であった。徳永幸蔵裁判長は、原告のうち十一人が個別に申請した作品の観覧を認めなかったのは違法として、十一人に計二十三万円の支払いを命じる一部勝訴の判決を言い渡した。
判決の中で徳永裁判長は、「天皇の象徴としての地位、職務からすると、天皇についてはプライバシーの権利や肖像権の保障は制約を受けることになる」と述べ、作品による天皇の肖像権の侵害を否定した。天皇の肖像権に対する司法判断は初めて。
大浦さんの作品は、昭和天皇の肖像写真と裸婦や解剖図などを組み合わせたもので、「遠近を抱えて」と題された連作。一九八六年に同美術館で展示されたが、右翼団体などによる抗議が繰り返され、美術館側は非公開扱いにし、さらに九三年四月には第三者に売却した。作品を掲載した図録も同時に焼却していた。
(12月16日23:05)
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