to Diary Top


ボクの名は酒鬼薔薇聖斗
夜空を見るたび思い出すがいい

さかきばら    せいと
酒鬼薔薇 聖斗



No. 

                 神戸新聞社へ          

この前ボクが出ている時にたまたまテレビがついており、それを見ていたところ、報道人
がボクの名を読み違えて「鬼薔薇」(オニバラ)と言っているのを聞いた
人の名を読み違えるなどこの上なく愚弄な行為である。表の紙に書いた文字は、暗号
でも謎かけでも当て字でもない、嘘偽りないボクの本命である。ボクが存在した瞬間か
らその名がついており、やりたいこともちゃんと決まっていた。しかし悲しいことにぼくには国
籍がない。今までに自分の名で人から呼ばれたこともない。もしボクが生まれた時からボク
のままであれば、わざわざ切断した頭部を中学校の正門に放置するなどという行動は
とらないであろう やろうと思えば誰にも気づかれずにひっそりと殺人を楽しむ事もできたので
ある。ボクがわざわざ世間の注目を集めたのは、今までも、そしてこれからも透明な存在であり
続けるボクを、せめてあなた逹の空想の中でだけでも実在の人間として認めて頂きたい
のである。それと同時に、透明な存在であるボクを造り出した義務教育と、義務教育
を生み出した社会への復讐も忘れてはいない
だが単に復讐するだけなら、今まで背負っていた重荷を下ろすだけで、何も得ることができない
そこでぼくは、世界でただ一人ぼくと同じ透明な存在である友人に相談してみたのである。
すると彼は、「みじめでなく価値ある復讐をしたいのであれば、君の趣味でもあり存在理由
でもありまた目的でもある殺人を交えて復讐をゲームとして楽しみ、君の趣味を殺人か
ら復讐へと変えていけばいいのですよ、そうすれば得るものも失うものもなく、それ以上
でもなければそれ以下でもない君だけの新しい世界を作っていけると思いますよ。」
その言葉につき動かされるようにしてボクは今回の殺人ゲームを開始した。
しかし今となっても何故ボクが殺しが好きなのかは分からない。持って生まれた自然の
さが
性としか言いようがないのである。殺しをしている時だけは日頃の憎悪から解放さ
れ、安らぎを得る事ができる。人の痛みのみが、ボクの痛みを和らげる事ができ
るのである。
                最後に一言
この紙に書いた文でおおよそ理解して頂けたとは思うが、ボクは自分自身の存在に
対して人並み以上の執着心を持っている。よって自分の名が読み違えられた
り、自分の存在が汚される事には我慢ならないのである。今現在の警察の動き
をうかがうと、どう見ても内心では面倒臭がっているのに、わざとらしくそれを誤魔
化しているようにしか思えないのである。ボクの存在をもみ消そうとしているの
ではないのかね  ボクはこのゲームに命をかけている。捕まればおそらく吊る
されるであろう。だから警察も命をかけろとまでは言わないが、もっと怒りと
執念を持ってぼくを追跡したまえ。今後一度でもボクの名を読み違えたり、また
しらけさせるような事があれば一週間に三つの野菜を壊します。ボクが子供し
か殺せない幼稚な犯罪者と思ったら大間違いである。


 ―ボクには一人の人間を二度殺す能力が備わっている―



No. 

P・S 頭部の口に銜えさせた手紙の文字が、雨かなにかで滲んで読み取りにくかったようなのでそれと全く同じ内容の手紙も一緒に送る事にしました。




  さあゲームの始まりです
  愚鈍な警察諸君
  ボクを止めてみたまえ
  ボクは殺しが愉快でたまらない
  人の死が見たくて見たくてしょうがない
  汚い野菜共には死の制裁を
  積年の大怨に流血の裁きを

    SHOOLL KILLER
    学校殺死の酒鬼薔薇




「犯行メモ」の抜粋

◆H9・3・16

 愛する「バモイドオキ神」様へ

 今日人間の壊れやすさを確かめるための「聖なる実験」をしました。その記念としてこの日記をつけることを決めたのです。実験は、公園で一人で遊んでいた女の子に「手を洗う場所はありませんか」と話しかけ、「学校にならありますよ」と答えたので案内してもらうことになりました。2人で歩いているとき、ぼくは用意していた金づちかナイフかどちらで実験をするか迷いました。最終的には金づちでやることを決め、ナイフはこの次に試そうと思ったのです。しばらく歩くと、ぼくは「お礼を言いたいのでこっちを向いて下さい」と言いました。そして女の子がこちらを向いた瞬間、金づちを振り下ろしました。2、3回殴ったと思いますが、興奮していてよく覚えていません。そのまま、階段の下に止めておいた自転車で走り出しました。途中、またまた小さな男の子を見つけ、あとを付けましたが、団地の中で見失いました。仕方なく進んでいくと、また女の子が歩いていました。女の子の後ろに自転車を止め、公園を抜けて先回りし、通りすがりに今度はナイフで刺しました。自転車に乗り、家に向かいました。救急車やパトカーのサイレンが鳴り響きとてもうるさかったです。ひどく疲れてい たようなので、そのまま夜まで寝ました。「聖なる実験」がうまくいったことをバモイドオキ神様に感謝します。

◆ H9・3・17

 愛する「バモイドオキ神」様へ

 朝、新聞を読むと昨日の「聖なる実験」のことが載っていたので驚きました。2人の女の子は死んでいなかったようです。人間というのは壊れやすいのか壊れにくいのかわからなかったけど、今回の実験で意外とがんじょうだということを知りました。

◆H9・3・23

 愛する「バモイドオキ神」様へ

 朝、母が「かわいそうに。通り魔に襲われた女の子が亡くなったみたいよ」と言いました。新聞を読むと、死因は頭部の強打による頭蓋(ずがい)骨の陥没だったそうです。金づちで殴った方は死に、おなかを刺した方は回復しているそうです。人間は壊れやすいのか壊れにくいのか分からなくなりました。容疑も傷害から殺人、殺人未遂に変わりましたが、捕まる気配はありません。目撃された不審人物もぼくとかけ離れています。これというのも、すべてバモイドオキ神様のおかげです。これからもどうかぼくをお守り下さい。

◆H9・5・8

 愛する「バモイドオキ神」様へ

 ぼくはいま14歳です。そろそろ聖名をいただくための聖なる儀式「アングリ」を行う決意をしなくてはなりません。ぼくなりに「アングリ」について考えてみました。「アングリ」を遂行する第一段階として学校を休むことを決めました。いきなり休んでは怪しまれるので、自分なりに筋書きを考えました。その筋書きはこうです。




 懲役十三年

 いつの世も同じことの繰り返しである。止めようのないものは止められぬし、殺せようのないものは殺せない。時にはそれが、自分の中に住んでいることもある。「魔物」である。
 仮定された「脳内宇宙」の理想郷で、無限に暗くそして深い腐臭漂う心の独房の中… 死霊の如く立ちつくし、虚空を見つめる魔物の目にはいったい何が見えているのであろうか。「理解」に苦しまざるを得ないのである。
 魔物は、俺の心の中から、外部からの攻撃を訴え、危機感をあおり、あたかも熟練された人形師が、音楽に合わせて人形に踊りをさせているかのように俺を操る。それには、自分だったモノの鬼神のごとき「絶対零度の狂気」を感じさせるのである。到底、反論こそすれ抵抗などできようはずもない。こうして俺は追いつめられていく。「自分の中」に…
 しかし、敗北するわけではない。行き詰まりの打開は方策でなく、心の改革が根本である。
 大多数の人たちは魔物を、心の中と同じように外見も怪物的だと思いがちであるが、事実は全くそれに反している。通常、現実の魔物は、本当に普通な彼の兄弟や両親たち以上に普通に見えるし、実際そのように振る舞う。彼は徳そのものが持っている内容以上の徳を持っているかの如く人に思わせてしまう… ちょうど、蝋で作ったバラのつぼみやプラスチックでできた桃の方が、実物が不完全な形であったのに、俺たちの目にはより完璧に見え、バラのつぼみや桃はこういう風でなければならないと俺たちが思い込んでしまうように。
 今まで生きてきた中で、敵とはほぼ当たり前の存在のように思える。良き敵、悪い敵、愉快な敵、不愉快な敵、破滅させられそうになった敵。しかし、最近、このような敵はどれもとるに足りぬちっぽけな存在であることに気づいた。そして一つの「答え」が俺の脳裏を駆け巡った。
 「人生において、最大の敵とは自分自身なのである」 魔物(自分)と闘う者は、その過程で自分自身も魔物になることがないよう気をつけねばならない。深淵をのぞき込むとき、その深淵もこちらを見つめているものである。
 「人の世の旅路の半ば、ふと気がつくと、俺は真っ直ぐな道を見失い、暗い森に迷い込んでいた」




神戸新聞朝日新聞等の報道をもとに編集のうえ作成しました。
 なるべくオリジナルに近づくよう努めましたが、多少の間違いはお許しください。


to Diary Top